2.既存の酔っ払っいの形

『私がいるとさ、だいたいあのタイミングで浮気相手だとかなんとか、めんどくさい絡みが始まるのよ。あんたに対してね』

LI◯E通話で話している友人が、私にそう伝えたのは悪夢の居酒屋の2日後だったと思います

とんでもない女の子に出会ってしまい、ろくでもない経験をしたな、と思ったがさらにその上がまだ控えていたのかとため息をスマホ越しに伝わるように盛大に吐きました

『それで、封筒に3万円も入ってたけど、僕にお金と彼女をどうしろと?』

『あんたがやっている副業で、彼女のアルコール中毒を上書きして欲しいの。ダメ元かも知れないけど、その前金よ』

その頃の私の副業は、大した物ではありませんが知人が取り扱っているある物を、フリマアプリで替わりに売ると言うちんけな商売でした

『せどりみたいなビジネスとかを教えてあげて欲しいとかって訳じゃ無さそうだけど、僕の副業で売ってる商品、本当にどういう物か分かってる?』

『そりゃ、あんたの倍近くは稼いでるからね、あの子。それも手取りでね。ちんけな副業ビジネスの話に私も彼女も興味がある訳じゃないのは、想像が付いているでしょ』

どうやら友人には本当に僕の副業も何もかも筒抜けのようだった

誰にも言ったこと無いのに、何処から広まったんだろうか

ある種の恐ろしさを感じながら友人は話を続けた

『あんたが売っているカンナビノイド、それでアルコール中毒を上書きして欲しいってこと』

『…僕はご存じの通り正真正銘のクズだから、欲している人に売ることは厭わないけどさ、あえて知らない人にそれを勧めるような鬼畜にはならないつもりだよ』

『偽善ってやつね。それを欲していない人間に使わせて悪用する人間が一定数いるかも知れないと分かっているのに、そこまで思考を巡らせず欲している人だけに対して売っている、ってのは自己正当化のつもり?』

耳と頭が痛くてたまらない

私が売っているカンナビノイドという品物は、アルコールみたいに飲み物として摂取し酔っぱらう物では無く、水タバコのように水蒸気を吸って摂取する物だ

摂取し過ぎて気持ち悪くなったりはしないが、酩酊感もあるし、気分の高まりもあるし、摂取しすぎると意識は混濁し、下手したらそのまま寝てしまうとか、使用している人から聞いた話だとアルコールと大して変わらない

聞いている、と書いたのは、人には売ってるくせに自分では正直使う気がしないからだ。

スマホを使うのが苦手と言う知人に替わり、販売を頼まれてはいるが試供品を勧められても私は、ニコチンとアルコールで十分嗜む程度のストレス発散は出来ているので頂いた物は引き出しの奥で眠っているという次第だ

カンナビノイドは、吸えば普通に酔っぱらうので、大学の新歓コンパみたいに立場が弱かったりそれを知らない人間を無理やり酔わせて、悪さをする輩が一定数いるのも心の何処かでは分かっていた

が、それはアルコールに置いても全く、どころかアルコールの方が認知度も効果も高い分、悪用乱用する人間が多いのだからカンナビノイドが一方的に悪いと言う感情は全く沸かなかったのも事実だ

『…言い返す言葉も無いさ。でも、そこまで思慮深い君が僕にこんな依頼をするくらいなんだから、きっと分かってると思う。アルコールよりは弱いと言われるけど、依存性もあるしアルコール依存症がカンナビノイド依存性に取って替わるだけとは思わないのかい?』

『…意外な事だけれど、君、自分では試して見たことがないのね』

『意外に思われる事について1つ2つ言いたい事はあるけど、さっきの質問の答えになってないよ』

アルコールもカンナビノイドもカフェインもニコチンも、紅茶ですら大抵の嗜好品には中毒性がある

中毒性があるからこそ、嗜好品足りうるのだ

とは商品の輸入、製造をしている知人の言葉だったか

『あのね、別に中毒を中毒で中和出来るとは思っていないの。ただ、カンナビノイドの酔い方が彼女に合っていると思っただけ』

『…中毒性に関しては?』

『やった事ある人は、みんな口を揃えてアルコールの中毒姓より低いと言っているわ。私もそう思ったから行動に出ただけ。…やったこと無いのに食ってかかるくらいなら、まず自分で試して見ればいいじゃない』

友人が話している最中に、それでも、と言いかけた私を遮って友人は少し苛立った言い方で言い放った

『それにね、私が君に借りを作ってるならともかく、君は私に大きな借りがあるって事忘れてないよね?私は、借りも無ければ君に対して間違った言動を取った事がないって事も忘れた訳じゃないと思うけど?』

実際、その通りだ

電話越しにやたらと借りを主張する友人が、間違った言動をしている所を見たことが無い

“まず考えて動く、を二段階に分けるのよ”とは友人の言葉だったか

正直、未だに意味を理解していないが、とりあえず若さを理由にして行動あるのみと考えていた私を諭したのはとにもかくにも友人の助言と説教だったのは確かだ

『…君の言う事に従って悪い方向に転がった事は無いけどさ、事情が事情だけにまずは考えさせてくれないかな?』

溜飲を飲み込む、とはこう言う事だなと思いながら私は友人の提案を一時先送りにする事にした

それに、

『分かってる。今回が初めての悪い方向に向かうケースになる可能性もあるって。でも、彼女前に酔っ払い過ぎて私に電話してきた事があってね』

私が考える時間すら遮って、ポツポツと話始めた友人の聞いた内容を纏めると、要は例の彼女が酔っ払って1人でいる所にしつこいナンパ男が付きまとい、暗い所で手篭めにされそうになったとの事だった

『…”返り討ちにしてしまった、大変な事をしてしまった、もう生きていられない、これから死ぬから遺言を一緒に考えて欲しい”なんて言われて、夜中なのに車すっ飛ばして迎えに行ったわ。本人は次の日の朝、何も覚えていないでケロっとしていたけどね』

それは正直スカッとする内容でもあるし、悪漢の自業自得で警察に通報する事も出来ないだろうし暗い所だったのであれば顔も覚えられて無いだろうから報復も無いないのでは…?と思ったが、論点はそこでは無いのだろう

『アルコールに限らないけど、中毒者って、突拍子も無いことを平気でするのよ。やったことを覚えて無いくらい意識が無い訳だし、そんな状態で何をしでかすか分かったものじゃない。分かるでしょ、時間があまり無いのよ』

頭の良い友人の事だ、私が考えられる範囲の禁酒に繋がる行動は全て試してからの依頼なのだろう

いや、依頼と言うより懇願に近い

こんな友人ははじめてだった

『じゃあ、とりあえずあの子と会ってみるよ。出来ればお酒抜きでね』

LI◯E通話を切り、タバコに火を着けながら今までのやり取りを逡巡する

真っ白なため息を撒き散らしながら、再度スマホのLI◯Eを開いた

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